建築用二次加工硝子の種類

ガラスの弱点等を補完する事とともに その機能及び装飾性の付加価値を高めた硝子加工

(1)強化硝子
(2)合わせ硝子
(3)曲げ硝子
(4)複層硝子
(5)鏡

(1)強化硝子

強化硝子には、風冷強化硝子、化学強化硝子がある。
ガラスの破壊は特殊な場合を除き表面からスタートし,外力によるガラス表面に現れる引張り応力がガラスの引張り強度を越えるために起こる

風冷強化硝子

ガラスの実用強度を増すために,軟化点近くまで過熱したガラスを,空気ジェットにより急冷しガラスの表面に圧縮応力層を形成し,ガラス表面に現れる引張り強度を越えることによりガラス強度を上げる。未処理ガラスに比べ3〜5倍の強度を有する。内部には引張り応力の層が形成されている。破壊の場合は 表面の圧縮応力面を越えると内部の引張り応力のために急激に亀裂が発達しガラス全面が細かく破壊される。JISでは 単位面積当たりの(1cm2)の破壊個数で規定されている。
現在は硝子厚み 3.2ミリ厚まで可能であるが それ以下の厚みだと以下に述べる化学強化の方法しかない

風冷強化の加工法の種類

(1) 垂直式つり強化

ガラスの上辺をつり手で垂直に保持し加熱炉に入れ強化する。
トングマークと呼ぶ つり跡がつく。

(2) 水平強化

ロール又はエアーフロー(空気の吹き出し)により ガラス板を水平に保ち強化炉にいれる。
最近の強化法はほとんど この方法である 生産性が高い

(3) 曲げ強化

自動車の風防ガラス等の強化方法

化学強化硝子

(別名イオン交換法による強化硝子)
イオン交換法によるガラスの強化は 高温でガラス中のアルカリイオンを溶融塩の他のアルカリイオンと交換しガラス表面に圧縮応力層を形させる。




カリュームイオンがナトリュームイオンより 大きいため イオン交換後ガラス表面に圧縮応力面を形成する事ができる。
化学強化は予備加熱炉で250〜300℃に加熱した後,イオン交換浴槽に浸漬する。普通380〜450℃の温度で数時間から十数時間保持する。

特長と欠点
(1) 風冷強化に対して2倍以上の強度が得られる。
(2) 処理に長時間要するのでコストが高い
(3) 形状肉厚の制限を受けない。
(4) 変形が起こらないため高い寸法精度が得られる。
(5) 試料保持に困難な小片でも可能。
現在ではこの化学強化がよく入るため『高ナトリューム硝子』(高Na硝子)等がある。
風冷強化の圧縮層は板厚の約1/6 とされ深い,しかし圧縮応力値は 10〜15 g/m2と低い 化学強化の圧縮層は 10〜300μmと浅いが圧縮応力値は 30〜80 Kg/mm2と高く風冷強化の2倍以上ある。

(2)合わせ硝子

ガラスを二枚以上合わせ 安全性又は装飾性を持たしたガラス
合わせ硝子の中間膜の種類

(1) PVB(ポリビニールブチラール)膜

一般に言われる合わせ硝子で 安全硝子の特色である飛散防止や耐衝撃貫通性が高い。0.38mm と0.76mmの膜厚があり 現在の自動車用のフロント硝子には後者の0.78mmの膜が使用されている。HPR膜(ハイ インパク膜)とも言われ自動車の衝突の時に頭部が貫通して抜け出ないような強度を有している。

製法
よく洗浄された2枚のガラスの間にポリビニールブチラール膜をはさみ.簡単なローラーの間を流し予備接着(簡単な気泡を除く)をし その後オートクレーブ釜にいれ 120〜150℃,10〜15kgf/cm2で圧着する。曲げ硝子の場合は曲げ硝子を袋に入れ空気を抜き大気圧を利用して予備接着を行う。
合わせ硝子可能最大寸法は このオートクレーブ釜できまる。
日本では積水化学,三菱モンサント,海外ではデュポン等が生産している。

(2) デュミラン膜

デュポンが開発した膜で太陽電池のカバー硝子の接着,及びサトーセンで作っているような 装飾硝子の合わせ膜として使われている。貫通衝撃性能は劣るが,装飾硝子の場合は間に装飾印刷した樹脂フイルムを張るのでこのフイルムのため貫通性能はよくなる。日本では武田薬品がこの膜を供給している。

製法
硝子と硝子の間にデュミラン膜を置いて約100℃の温度で保持すると膜が溶解し硝子との接着ができる。 技術的に難しい点はガラスと膜の間の消泡で 小さな泡が残る事がある。サトーセンではデュミラン膜等の合わせでの発泡を防いでいる。

特長
日本板硝子の『ディープ,ルミカラー,レインボー』は この製法で作っている。素材構成は 硝子+デュミラン+ポリエステルフィルム+デュミラン+硝子ポリエステルフィルムに各種の印刷を施し合わせるので,比較的小ロットで独自の柄模様の特注が可能。デュミランは比較的低温で100℃前後で加工できるため フィルムの有機印刷の色変色が起こらない。国内では 武田薬品がこの樹脂の供給をしている

(3) ナフトラン

このアクリル系の樹脂は膜と言うよりも溶液のタイプで供給される。

製法
ガラスの周辺にスペーサー(1mm程度の糸)入りのブチルテープを巻最後に溶液注入口を確保しそこからナフトラン溶液を注入する。そして注入口を再びブチルテープで蓋をすると 化学反応が起こり形成し合わせ硝子が出来る。ただ周辺部のブチルテープの部分は最後に切断しなければならない。

特長
この合わせ硝子は膜自身の貫通性能はJISの規格を満足できない。したがって JISで規定されている合わせ硝子とは認知できない。膜が柔らかいために遮音機能がある。溶液に染色が可能なためにいろいろな色硝子を作る事ができる。
ただ窓硝子は長期に紫外線を浴びることを考えなければならないために染色色素の(染料,顔料)耐候性を十分に確かめる必要がある。内部に使用する時は問題がない。ガラスとガラスの空間が1mmでも 1メートル(1000mm)四角のガラスの合わせに必要とする溶液の量は 1 X 1000 X 1000=> 1リットルの量がいる事になる。現在この溶液が1リットル2000〜3000円程の価格である。

(4) 接着法

上記3の種類はすべて膜自身がある厚みをもっていたが.この方法は直接接着剤でガラスを2枚以上接着する方法である。
装飾硝子等を簡単に製造するためで 間に印刷したポリエステルフィルムをはさみ接着剤でガラスを合わせる。
旭硝子のラミトーンがこの方法である。

(5) その他

現在ではいろいろな有機フィルムが合わせ硝子の材料にと挑戦されている。ウレタン系,エンビ系,アクリル系 従来の安全硝子だけの要望から市場のニーズが 他の機能を要求してきている。防音,遮音,断熱,装飾 等.日本板硝子の 『ウム』『アングル21』『弦』等が窓硝子に求められる新しい機能なのであろう。

(3)曲げ硝子

曲げ硝子の製法の種類

自重曲げ

硝子の自重で自然に曲げていく方法で 市中の曲げ加工工場は殆どがこの方法である。
曲げ型周辺部分に銑鉄で枠をつくり それにガラスが型にそうまで加熱し,その後切断を可能にするために徐冷して成型する。
一般建築用の曲げ硝子はこの方法で作られている。
土型で型を造り それにガラスをそわせる。カーブミラー又は照明器具用の曲げ硝子がこの方法である。

強制曲げ

雄,雌型でプレスをして強制的に曲げる。ガラス温度は事前に軟化点近くまでプレヒートしておく,自動車用サイド硝子などにこの方法が多い(曲げ強化硝子)普通曲げ硝子は 冷却の管理をうまく行わないと ガラスが変形したり破壊したりするので冷却時間を必要とするため生産に時間が係る。

(4)複層硝子

空気は 格好の断熱物質であるため この性質を利用して2枚のガラスに一定の空気層をあけ その間に乾燥空気を封入して製作された硝子製品省エネルギー及び快適空間を創造する商品である。
硝子空間には5ミリ(ホームマルチライト)6ミリ,12ミリ等があり空間の空気層が厚いほど断熱効果が望める。封入する乾燥空気は現在の製法では ガラス周辺に巻くスペーサーの中にシリカゲル,モリデン等の乾燥剤を入れて封入する。
封入コーキング材には ガス透過性の低いチヨコール系のコーキング材が使われるのが一般的である。シリコーン系のコーキンギ材は耐候性又接着力については問題がないが,長時間のガス透過を引き起こすので複層硝子などの気密性保持の目的のためには難がある。


(5)鏡

鏡の歴史
銅,銀,金などを研磨した金属鏡等が有史以前より使用されていた。
ガラスの材料も古いので金属と組み合わせて鏡とされている。
14世紀には中空ガラスに鉛と亜鉛の合金を注入した目玉鏡
現在の様にガラス面への銀の析出は,1843年Draytonにより発見された。
日本の板硝子メーカーは,1966年頃から連続製鏡着手し今日の銅引鏡が供給されるようになった。銅引鏡はガラス表面に銀を析出させその酸化防止のために その上に銅を引いた鏡で 耐薬品性も向上して現在にいたっている。
又反射率の低い鉛を使用した装飾用のダークミラー自動車のバックミラーも以前は銀引き鏡であったが。銀価格の高騰した時期に新しい製法である真空蒸着法によりアルミ金属にてバックミラーを又クローム金属を使用したマジックミラー等もある。

製法の種類
(1) 銀を化学反応でガラスの上に析出させ銅引きする方法 普通の鏡
(2) 金属を真空蒸着法でガラス面に金属被膜を生成する方法 バックミラー等
(3) 金属を真空スパッター法でガラス表面に被膜を生成する方法 レフシャイン

ガラスの切断

(a)ガラスカッターによる切断

ダイヤモンドカッターや超鋼合金製のホイルカッターなどでガラス表面をひっかき内クラックを発生させる。そのクラックに沿って衝撃や熱応力でクラックを成長させ切断させる方法。

(b)砥粒による切断

砥粒の種類
カーボランダム,コランダム,金剛砂,ダイヤモンド砥粒等の種類がある。

 (1) 回転円盤,往復帯鋼,ワイヤー,等にスラリー砥粒を用いる方法
  1.ダイヤモンドディスク
  2.ガラス鋸 等が私達の周辺にある商品
  3.ワイヤー 
   ガラスの立方体からガラス板を製作する方法に使われている。
   光ディスク,磁気ディスク用のガラス基盤等の製作に使われている。 

(2) 噴射切断
   昔から存在する方法として ガラスエッチング等の金剛砂の吹きつけなどで切断する方法
   ウォータージェット
   技術的には古くからある方法でしたが,ガラスなどの異形切断又合わせ硝子などの切断にコンピューター制御を組みこみ
   最近脚光を浴びている。
   従来不可能と考えられていた切断が可能になった為に 板ガラスの使用用途の拡大が考えられる。

(3) 超音波切断
   工具の超音波振動を利用して砥粒及び加工圧を併用した切断方法
   ウォータージット切断が可能になったため 使用される事が少なくなった。

(c) 熱による切断

   ガラス表面を急激に過熱すると周辺部分との熱応力が発生してクラックが発生する
   クラック最大熱応力面に沿って伸展する。ガラス食器やガラス管又曲面ガラスの切断などに実用化されている。
   高温発熱体(500〜1000℃)または 高温ガスを吹きつけて加熱する方法がある。

(d) ビームによる切断(,電子ビーム)

   CO2ガスレーザーの波長(10.6μm)がよく吸収される特性を利用して,レーザービームを硝子表面に照射して爆発蒸発させて切断する方法で石英硝子,ホウケイ酸硝子等の 切断に利用されている。

(e) 化学腐食による切断

   フッ化水素酸に硫酸 塩酸または硝酸を加えた液によってガラスをエッチングする方法で古くからおこなわれている。
   フォトエッチング等に利用されている。